韓国の記憶 #10
KOUDA YUJI

20001217

10.)日韓間の誤解

日韓間のビジネスチャンスが増えているが、それにつれて誤解による軋轢(あつれき)も増している。著者も韓国に駐在していたが、隣人と付き合うには、まず隣人と我々との文化習慣の違いを確認しなければならない。一般に韓国では、日本語が通じることが多いと考えられているが、ビジネスの世界ではむしろ日本語は通じないと考えた方が無難である。

■漢字語も誤解の温床

朝鮮半島で使われている言葉の起源は、大きく四つに大別される。一つ目は、漢字では表記できない古来からの単語で、首都を意味する「ソウル」、国を意味する「ナラ」など。二つ目は、中国から導入した漢字で、南北首脳会談でも使われた「相逢」、米国を意味する「美国」など。三つ目は、日本の影響を受けた言葉で、「社会」「株式会社」などの和製漢字や、「アナゴ」「うどん」など日本の発音がそのままハングル表記されている例がある。四つ目は欧米系の外来語で、韓国では英語の影響が、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)ではロシア語の影響が強い。

1990年代初め、韓国と北朝鮮の政府関係者が久しぶりに直接交渉のテーブルについた時には、文語調の古めかしい言い回しをする北朝鮮と口語調の韓国との間で、意思の疎通に苦労したようだ。50年以上の分断で、言葉にもいろいろな変化が起きていた。

意外なことに、中国の朝鮮族の若者は韓国風の朝鮮語を話す人が多い。韓国のラジオや衛星放送が受信できるためで、彼らは韓国の歌やタレントをよく知っている。

「朝鮮」という表記を「チョウセン」と発音することは、韓国では差別語として受け止められる。朝鮮半島は「韓半島」、朝鮮語は「韓国語」と表記される。

韓国にいると、「日本人は、韓国人が日本を勉強しているほどには韓国を勉強していない」という韓国側の嘆きをよく聞く。一方で、「一定レベルを超える水準では、日本語のできる韓国人より韓国語ができる日本人の方が多い」とする説もある。

例えば、日本語の「検討する」と韓国語の「検討ハダ」は同じ表記の漢字を使いながら、ニュアンスは全く異なる。「検討ハダ」は「ほぼ了解した」という意味に近く、「検討する」には別の表現をあてなければならない。韓国語を操る日本人はこうしたニュアンスの違いに敏感だが、韓国人の多くはあまり差異を気にしない。

韓国とのビジネス経験が豊富な商社勤務のAさんは、「ビジネスパートナーとしては、日本語ができない人よりできる人の方を気を付けなければならない。日本語が通じると思っていると、思わぬところで誤解が生じている」と語る。

■人間関係にも文化の違い

マナーでも誤解を生じやすい。例えば、日本では客を上座に案内するが、韓国では主が上座に座るのが本来の習慣である。日本では客の期待や希望を考えてメニューを選ぶが、韓国では主が客にふるまいたいと考えるものが食卓に並ぶ。

日本流の茶わんを手に持って食べるマナーは、韓国では「がつがつ食べる」しぐさとして不作法とされる。韓国の茶わんを手に持たない食べ方は、日本では「猫まんま」になる。日本では、酒は相手の話を聞きながら、顔は相手に向けながら飲む。韓国では、目上の人の前ではほぼ直角に顔をそむけて飲む。しぐさの違いに慣れ、使い分けるのは大変だ。

そもそも韓国では客の立場が日本と異なる。日本は「お客様は神様です」だが、韓国のタクシーにはよく「お客様は家族同様に」という標語がついている。韓国はもともと、家族、一族を大事にする文化であり、次いで会社の上司、最後に客という順番である。

「提携先の韓国企業の重役にビジネス上のクレームを伝えたが『社長には言えない 。私のメンツもあり現状を追認してくれ』といわれて困っている」、「日本から出張してきたのに面談予定の重役は社長命令で実業団のバスケットチームの応援に行っていた 」などなど、日韓間のビジネスは、当事者の涙と第三者の笑いのネタに事欠かない。

彼我(ひが)の文化の差異をわきまていても、良好な関係を築くには難しい相手である。おそらく、先方もそう考えている。

つづく

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