「Viet Nam 日誌」
ふくちゃん vol. 3-4

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第1部 Viet Nam 日誌
第3章 慣れはじめたぼく (4) 最悪の日

7月12日 土曜日 快晴 暑すぎ ホーチミン・シティ

 8:00起床。ちょっと遅め。いやー、フエの街はほんと静かだ。もちろんホーチミン・シティに比べるとということになるんだが。このホテル、新市街地のど真ん中だというのに、ぜんぜん騒音がしない。ただ、エアコンがききすぎてちょっとのどが痛い。
 朝起きて気づいたのだが、ぼくはぺらぺらのベッドカバーみたいなの1枚で寝ていた。ちゃんと毛布があったのに…。ちょっと失敗。
 
あと、初めてヴェトナムに来て夢を見た。しかも日本人ツーリストが3人も4人も出てくるような夢。なんでなのかなあ。やっぱり、日本語に飢えてしまってるのかなあ…。そういえば、日本人に最後に会ったのは、おととい、ホーチミン・シティの郵便局だった。たしか、その男の人はバンコクから来たと言ってた。あまり会話は交わさなかった。実は彼もあの、神様少女の友だちだった。やっぱ、あの子は商売がうまかったんだなあと改めて感じた。
 今日は特にしなければいけないことはなかった。しいてあげれば、手紙を出すことと、ニャチャンまでの移動手段を決めることだけだった。天気もいい。さあ、そろそろ外に出ていくか。

 そう。これが、ヴェトナム旅行、最悪の日の始まりだった。

まあ、とりあえずは朝飯、ということで、宿のすぐとなりの屋台でPhoをすする。あー、おいしい。Phoはほんと、何回食べても飽きない。そこのおばちゃんに声をかけられた。「今日はどこへ行くんだ?」と。ぼくは「ぜんぜん決めてない。とりあえず、手紙を友達に出すんだよ」と言い、郵便局を探す。
 なぜだかよくわからないが、書店にいるときと、郵便局にいるときは不思議と心が安らぐ。これは、ホーチミン・シティのときも同じだった。よくわからないが、すごく落ちつく。街中なんかを歩いてるときはすごく警戒してるのに。それがほぐれ、まわりの人みんながなんとなく信頼できる人に見えてくるから不思議だ。
 郵便局を無事発見。その横の書店スタンドみたいなとこで、地図を購入。7,000D。そのあと、郵便局で手紙を書く。
ホーチミン・シティにもすごく立派な中央郵便局があった。そして、ここフエの郵便局もなかなかのものだ。中はとても清潔。そのうえ(ホーチミンの郵便局もそうだったが)ちゃんと椅子と机があって、そこで手紙が書けるようになっていた。
 そこでぼくは、手紙を投函しぼくはフエの駅をめざしていた。でも、今日はすごく暑い。駅まで行ってまたこっちへ戻ってくるだけだから…。
 シクロを捕まえてもいいかな、そう思いながら歩いているときのことだった。

 「シクロ、シクロ!」
 
 そう、そのささやきが、ヴェトナム旅行最大の、悲劇の序曲だった。

 「No Problem. No Problem.」とやつが近づいてきた。
 「ここから、フエの駅まで行って、またこの橋のとこまで戻るだけなんだよ」とぼくは説明した。
 そして、値段交渉。やつは20,000Dを主張した。しかし、ぼくはそれなら歩くと言った。じゃ、15,000Dでいいと彼は言った。そこでぼくたちは折り合った…。はずだった…。
 やつとぼくは、わきあいあいとした雰囲気のまま、Ga Hue(駅)に向かった。それが、だいた10:00過ぎくらい。やつを待たせ列車の切符を買いに行った。
 14日のニャチャンまでの片道キップ。あいにくベッドのチケットは売り切れでなかった。しかたない。シートのチケットを買うことにした。これでぼくは1日列車のシートに揺られることになる。ぼくの予約した列車は「S 1」という一番速いやつ。それでも、フエからニャチャンまで13時間かかる。ぼくの横にいたちゃきちゃき英国人(22歳)が「ほんとたいへんなんだから」みたいなことをしきりに言ってた。でも、ほんとどうしようもない。
 281000Dで無事チケット購入成功。まあ、3,000円くらいで移動できるんだから、よしとしよう。でも、あさって(14日)は朝、8:50から夜23:00まで、1日列車にカンズメだ。
 チケットを手にしたぼくは、やつのところへ戻る。
 「いやー、チケットちゃんと買えたよー」みたいに。
 そして、駅前のカフェで7up(日本ではあまり見ないが、この国ではいろんなとこで幅を利かせてた)を飲む。ぬるい7upがビンのまま出てきた。5,000D。ああ、なんとなく損した気分。
むりむり7upを飲んでチャンティエン橋まで、またわきあいあいとしたとした雰囲気で行く。やつは26歳で子どもが一人いると言ってた。そうか、ぼくより1つ年下でもう子どもがいるんだ…と思いながら走ってるうちに、橋のたもとまで来た。「あそこらへんでいいよ」と言って。そして、やつはぼくに向かってこう言った。

 「20$」

 は、え、いや、なにいってんの、お前?15,000Dでいいって言ったじゃないか?なんだ、おまえ!
 そう、やつはなんと10倍もの値段をふっかけてきたのだ。

やつ:「いや、ちがう。20$を15$にまけたんだ」ぼく:「あほか、おまえ。なに言うてんねん!(怒るとやっぱり大阪弁になる)20$も15$も払えるか! この、ぼけ!」

ぼくはもう、なめられたくやしさとあまりな法外な額の請求に、もう切れかけ寸前だった。

ぼく:「おい、よー聞けよ。おれの泊まってるホテルでも、1泊20$やねん。そやのに、なんでちょっとのせてもろただけで20$も払わなあかんねん。じゃあな、しゃあない。大負けに負けて2$やるわ。それでええやろ」

 しかし、それでもやつはぜんぜんだめみたいな顔してる。なんだこいつ!ほんと、ハラたつ。ぜんぜん、言ってることが違うじゃないか!
 そうして言い合いしてるうちに、わらわらとやつの仲間らしきやつが集まってきた。うっ。なんだかやばい雰囲気になってきた。でも、20$とか15$なんて、絶対払えない。
 そうすると、やつはなぜか7$を要求してきた。なんだ、なんでいきなり7$なんだ。うー、もーめんどくさい。じゃあ5$やるよ。これで、いいでしょ。まったく。 結局、ほとんどけんか状態で5$やった。それでも、15,000Dの3倍以上なんだ。しかし、それでも、まだ、それでもやつはまだうしろの方でぶつぶつ言ってる。あああーーー、むぅおーー、うるさいなあーーっ。結局ぼくはもう1$やってしまった。結局6$。そうすると、やつは「You are good」なんてぬかしやがった。なにがgoodだ。ぜんぜんgoodじゃないよ。

   ああああーー。はらたつ!

 ぼくはこの事件を境に、フエの街が大嫌いになった。

 失意のなか、ぼくは「子どもを支える会」の事務局を探した。そう、ヴェトナムの子どもたちのためにお薬を届けることが、この旅の大きな目標の一つだ。「もう、シクロには二度と乗らない」と決めていたぼくは、もくもくと歩いていた。そこへ一人の少年が声をかけてきた。「Rent Bicycle」
 現にぼくはそのとき、ちゃりんこを探していたところだった。
 「いくら?」
 「10,000D」
 「よし、それでいいよ。でも絶対それ以上払わないからね。はい、10,000Dね。これでもう払わないからね」と先に金を払う。
 さっきシクロでふっかけられたばかりのぼくは、相当びびっていた。少年は「No Problem」と言った。そして、今度はほんとにNo Problemだった。
 ちゃりんこに乗り再び「子どもの家」を探す。地図をよく見てみると、ぼくの考えていた場所とはかなりづれていた。
 事務局は大きな通り沿いにあってすぐ見つけることができた。しかし、残念ながら扉は閉じられていた。目の前には「支える会」の看板と同じ日本語の文字の入った帽子をかぶったガードマン風のおちゃんが立っていた。しかし、このおっちゃん、ぜんぜん日本語ができなかった。なにか聞いてもおっちゃんはわからない。時計を見ると、11:00すぎ。ガイドブックを見ても、ちょうどクローズタイム。
 まあ、運が悪かったとあきらめることにした。また来ればいいだけのことだ。さあ、時間はまだまだあるし、せっかくフエに来たんだから、王朝でも見に行くか、とグエン王朝へ。ここフエは、日本でいうと京都のような感じの静かな古都。グエン王朝のほかにも、たくさんの寺院がある。その代表的なものがグエン王朝だ。

 どの観光地へ行ってもそうなんだが、目の前には必ずと言っていいほど、物売りの子どもたちの姿がある。もちろんここも例外ではなかった。王朝の前には数人の少年がいた。ぼくは、ジュースを勧められたが断った。しかし、これまで 物売りに比べそれほどしつこくはなかった。後から考えるを、その中の一人の少年は、たしかに目つきが鋭かった。
 仲間の年少の少年が、その少年を指さしこう言った。
 
「マフィア、マフィア」

 そしてそいつは、ほんとにリトルマフィアだった。

ぼくは、リトルマフィアとは知らず、「ちょっとみててくれ」と自転車をあずけ王朝見物に行った。
 はっきりいって王朝はたいしたことなかった。50,000Dも払って入ったんだが、中はただただ、広いだけ。見どころは入ってすぐの本堂みたいなのだけだった。あとは、ほとんどが草むら状態。あとから聞いた話によると、どうやらヴェトナム戦争でほとんど破壊されてしまったらしい。その上、灼熱のヴェトナムの太陽が降り注いでいる。時刻は正午。ああ、暑い。
 ヴェトナムに来て、「ああ、緯度が低いんだなあと感じたのは、影がすごく短いなと感じたときだった。昼間なんか、ほとんど日陰がない。酷暑のなか、王朝のヴェトナム国旗が、ぱたぱたと気持ちよさそうに翻っていたのが、とても印象的だった。 王朝見物から帰ってきたぼくは、「戻ってきたらジュースを買ってやるよ」と言ってたおっさんからジュースを買った。だまってペプシかなんかにしとけばよかったのに、なんか、真っ白のあやしいジュースを買ってしまった。それに、なんと、20,000Dも要求された。しかし、もう遅い。飲んでしまってる。「あー、やられた」と思いながらとびきりまずいジュースを飲む。そして、さあ、行こうと思い自転車をとりにいくと、「おれが見てただから、20,000Dよこせ」ときた。やられた!やっぱこいつマフィアだったんだ。でも、見てもらってただけで20,000Dも出せるか!「あほか?おまえそんなこと言うてなかったやろ!No No」でも、マフィアもくいさがってくる。「ちゃんと、自転車みてたじゃないか?」と。じゃあ1,000Dならやる。でもそれ以上は絶対やらん!
 1,000Dやって王朝を後にした。でも、なんとなく後味が悪い。しかし、今日の不幸はまだまだ続く…。

 王朝を去りまた炎天下、自転車をこぎ続ける。今度はフォン河沿いのティエンムー寺へ。しかし、そこまでは4キロ。
 途中、自転車をこぎながら、「ぼくはなんでこんなことをしてるんだろう」と考える。涼しい部屋でビールとか飲みながら、ぼーっとしてるほうが、らくちんなのにね。でも、エアコンの効いた部屋からは何も出てこない。そして、ちゃりをこぎ続ける。
 今度は自転車置き場に自転車を預け、お寺見学に。
 幸い、そのお寺には入場料はなかった。でも、なくて当然のようなとこだった。だた、ちっちゃな五重(だか何重だかわからないが)の塔みたいなのがあるだけだった。もうだめ。ヴェトナムの寺まわりは、はっきり言ってぜんぜんおもしろくない!くそ暑いし、おまけに寺はしょぼいし…。
 
 あまりに暑いので、ジュースを飲んで休憩。またまた、ぼられたばかりなので、まず、値段を聞いてから買う。缶ジュース1本8,000D。そして、今度はとてもおいしい。ほとんど一気の飲み干してしまった。時刻は14:30。あー、それにしても暑い。ヴェトナムの人たちが昼寝する訳がようやくわかってきた。こんなに暑けりゃ、休憩しないと1日もたない。とにかく、1度ホテルの戻ろう。としたとき。

「ない」

 ちゃりを預けたときにもらった札がない。
 あー、やばい。でも、どこをさがしてもない。ない。どっかで落としてしまったのだ。あー、どうしよう。でも、どうしようもない。ないものは…ないのだ。 自転車置き場に戻ると、たしかにぼくの自転車はあった。サドルには「59」とチョークで書いてある。
 「あのー…すいません」
 自転車置き場のおっちゃんにすまなそうに言う。
 「すいません。ぼく、札なくしたみたいなんですけど…」
 でも、なかなな通じない。もちろん英語も。おっちゃんは「早く札だせよ」みたいな顔してるし。しばらくして、ぼくが申し訳なさそうにしてると、ようやく事情がわかったみたい。しばらくして、「ああ、行っていいよ」みたいなことを言われた。でも、きっちり20,000Dとられた。でも、今回ばかりは仕方ない。ぼくが札をなくしてしまったんだから。ああ…。ついてないなあ、まったく。


第三章 その5へ続く
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