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98年冬物語 vol.11 BY 菊正敏 |
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我々の乗った寝台車には食事がついている。といってもオリ工ント急行や「北斗星」「トワイライトエクスプレス」のようなムードある食堂車で豪華な食事とはいかない。タ方5時頃係のおじさんが弁当を配りにきた。プラスチックの容器に入った弁当はインディカ米のご飯と肉・ハム、そして潰物で、最後に大きなポットに入った温かい野菜スープを注いでくれる。他に紙のオシボリ、なぜか懐かしい甘いウェハース、ミネラルウォータ(200cc)と、外国人だけ特別に栄養ドリンクがついてくる。ちょうど10年くらい前にインドを旅した時に乗った特急列車で、食事時間になると弁当が配られたがまさにそれと同じである。ドリンク類はついていなかったが。向かいの老夫婦が備え付けのテーブルをセットしてくれ、4人で向い合って仲良く食事を楽しんだ。おじいさんが「私はハムはダメだから」という表情で、私の弁当にハムを入れてくれた。食べたカラも片付けてくれ色々親切にしてもらった。私の方もお礼に韓国製栄養ドリンクを一本おじいさんにあげた。おじいさん一口飲んでやめてしまった。その後老夫婦は荷物からビンに入った不思議な液体を取出し飲み始めた。きっと自家製ベトナム健康ドリンクだろう。これは身体にいいんだ、というポーズをとっていた。 私が飲み終えた水の容器やビニールのゴミを捨てようとごみ箱を探していると、おぱあさんはお歯黒の口元をニッコりとゆるめ手で「外に捨てろ!」という仕草。「ええっ、窓から外に捨てるの?うそだろ」私がそんな表情をすると、さらに「投げていいんだ」ときっばり返ってきた。正直言ってやっばり気が引けた。が、「郷に入ったら郷に従え」。私もベトナム人の仲間入りだ。しかし、よくよく線路付近を見ると、ビニールの袋や色々な容器が確かにばらまかれ本当に汚い。特に駅が汚いのであるが、ベトナムでは特に問題にしていないようだ。日本であれぱ新聞の読者欄に投書されるのがおちだろう。 旅行ガイドや荷物整理をしていると、時計はもう7時。外は真っ暗。何もすることがないので、洗面所で歯を磨き、顔を洗って上の寝台へあがる。チケット通りであれば二人で上下段になるが、老夫婦のために我々がそれぞれ上段に寝ることにした。部屋の鍵もロックして、貴重品は身体に付ける。また、車内は車掌や公安が結構巡回しているので今のところは安心だ。 日本の寝台車であれば、カーテンと枕元の照明が設置されているが、この車両にはなく部屋の電気を消すと本も読めなくなる。8時前だが、疲れもあるので早く休むことにした。しかし列車の揺れよりガタンゴトンと音の方が寝る邪魔になり、なかなか寝付けない。ちょっと寝てすぐ目が醒めることの繰り返し。それでもどこかで寝たのだろう。深夜1時くらいにいったん目が醒め、その後「ニャチャン〜、ニャチャン〜」の大きな駅のアナウンスで起こされた。時計を見ると朝の3時45分。また寝たり起きたりの繰り返しだった。 |
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